sayonarayouth

twitter @aokaji_soda

「自分と関係のない感傷」の話。

 相当ふわっとした話なのだけど、物語が感情で動くタイプの創作物において、「このキャラクターの悩み、どうでもよくね?」ってなることたまにありませんか。そしてそう思ってしまう時って大抵その物語自体に自分がノレていない時だというか、言い換えればキャラクターに何の共感も感情移入もできない時だと思うんです。

 ある物語の素晴らしさの基準に必ずしも共感や感情移入があるわけではないとは当然理解しているつもりだけれど、どう考えても「これはきっとあなたにも心当たりあるはず/あなたに寄り添ったドラマです」みたいな作風のものってありますよね。今回はそういうものに出会った際のお話。

 

 

 友人が勧めていたとある舞台を観に行ってきた。特別劇場用に拵えたわけではない空間を利用して、観客は少人数、代わりに舞台と客席には言葉通り同じ空気が流れるような、目の前の物語がとても近い作品だった。

 結論から言うと、僕にとっては面白くなかった。別に捻くれだとかそういうんじゃない。とある賞を獲っている脚本だともいうから、当然客観的にある程度評価されているものらしいということも分かっている。それでも、観終わった後に残るものが何もなかった。

 その物語は、その劇場の作りからも伺えるように、きっと「あなたの人生に近い」物語だったのだろうと思う。その物語のシチュエーションそのものの経験はなくとも、類似した過去がどこか重なって、自分自身を振り返ることができるような、そういう作りであったように思う。

 僕には、目の前のそんな物語に乗っける気持ちや過去が1グラムもなかった。彼らの感傷が遠く、何に真剣になっているのか、捉えることが出来なかった。

 舞台は、登場人物の大学卒業と同時に、それまでの生活拠点だった場所が取り壊されるという筋書きで、その出来事に付随した、住人たちの心模様が、二時間とちょっとで描かれる。

 

 僕はどちらかと言えば大学が嫌いだったし、大学内に、どっぷり浸かり込めるようなコミュニティを持たなかった。だから、目の前で繰り広げられる登場人物の叫びを、白々しいものにしか思えなかった。

 どうしてそんなどうでもいいことで悩んでいるの? なんて酷い言葉だろうと思うけれど。

 そんな風にノレなかったのは、ひとつにドラマが終始感情で動き、実際行動に現れることや解明される事実のようなものがほとんどなかったからだろう。キャラクターが悩んでいる出来事が、客にとってふわふわしすぎている。中盤、めちゃくちゃブチ切れるキャラクターがいるのだけど、ブチ切れるに至ったらしい過去の出来事が、結局最後まで明かされない。それは語るべき必要のないものという作り手側の判断で取捨選択されたもののうちのひとつなんだと思うけど、「どうしてその感情を今抱いているのか」という因果を明かさないのって、僕は不足ではないのかな、と思う。それを観客個々に委ねるのは少しぞんざいに思える。

 物語はほとんど、「過去何があったか」は語られず、4人のメインキャラクターの「現在の心持ち」にフォーカスが当てられるんだけど、リアルに近いものを描くなら、尚のことバックグラウンドをふわっとさせといてはいけないでしょうと思えて仕方ない。加えて、学生が終わること、終わってからのそれから、に悩んでいる割に、それに対しての行動は何も描かれず、とりあえずみなその住処を去っていくという結末しか描かれない。場転なしの一空間だけの芝居においてできることは限られているかもしれないけれど、人間(=キャラクター)結局どう行動するかなので、心持ちが変わりました~だけでは変わったことにはならないですよね。いや、究極別に変わってないですよっていう表現意図であればそれは正解だろうけど、そんな物語ではなかったはず。

 この脚本のどこが、賞をもらった理由なのか、僕には分からない。純粋に空間の使い方だとか、会話劇の完成度とかが評価されたってことなのかな。僕はこれが普遍的な物語だとあまり思えないし、現代の大学生の感覚に近いものとも思えないんだよね。それこそ、昭和の人たちのノスタルジーで評価されたんじゃないの、とか、穿ってしまったりもする。二時間あれば、もうちょっと描くことができるものがあると思うんですけど、賞取った作品に素人がなんか言うのも野暮ですね。

 結局のところ、「きっと普通に幸せになっていく」ことに悩んだり、「想い人に想いを伝えないで別れる」こととかに、もうあんまり体重乗っけない自分の視線が極めて冷静なものであるだけなんだろう。二浪して大学に十年もいる30のおばちゃんキャラに人生説かれてもなぁ……って、なるじゃん。そのおばちゃんがそれからどういう人生歩むか描かれるわけでもないのに、感動も何もないでしょう。お前の悩みはお前が悪いじゃん、しか言えない。30歳の留年生を慕うことなんてまずないと思うんだよね。そのキャラ付けなんか昭和っぽい。どうせなら彼女のキャラクターだけは湿っぽくない超越性持ってた方がいいと思うんだよね、それってアニメっぽいかしら。

 まだ高校生キャラクターの方が純粋に希望もらえるな、とか、思っちゃう。

 いやぁ、でもやっぱり自分と1ミリも関係ないキャラクターの悩みでも、因果ちゃんと描かれていればドラマとしては感動できるよなぁ、なんだかなぁ。

 

 

 私信。勧めてもらったのに、こんな感想しか出ませんでしたが、繕うのは真摯ではないと思うので、何卒。