sayonarayouth

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ヴェノムの話

 遅ればせながら『ヴェノム』観ました。「MCU以前~初期のようなアメコミ映画」とはよく言ったもので、そんな実感がありました。一番の感想として、「スパイダーマン絡まないとまんま寄生獣だな」というもの。惜しいなと感じる部分もぽつぽつあり、「こうすればよかったんじゃないか」なんて感想を、素人ながら忘れないうちに書いていこうと思う。当然仕事でやっているプロが考えなかったことなんてないだろうし、諸々の制約、取捨選択の結果なんだろうとは思うけどね。「ぼくがかんがえたさいきょうの」という言葉はとても便利ですね。バレ有りです。

 

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 大まかな基本設定として、ヴェノムは一度ピーター・パーカー/スパイダーマンに寄生したシンビオートであり、エディはスパイダーマンに因縁がある。単独作ということは、エディ・ブロックとヴェノムが共にピーター・パーカー/スパイダーマンに志向性を持つというアイデンティティが喪失するということである。ではその個性はどう変形して今作に盛り込まれただろうか。これが結構微妙なアレンジだったなと思う点である。

 エディは、ピーターに当たる対象(≒復讐)を、勤めていた会社の社長か、ライフ社のドレイクに求めることができ、実際、ドレイクと対決することになった。でもこれがドラマの一本の筋になっているわけでは決してない。

 そしてヴェノムには特定の対象がいない。映画内設定では、ヴェノムと共にやってきたシンビオートのうちの一体、ライオットが故郷の星での因縁があるという設定だったようだけれど、特別前景化しなかった。確かに故郷でのシンビオートの物語を(視覚的にも)描いてしまうのはテンポを落とすし、野暮だろう。しかしもう少し、ヴェノム自身の復讐を盛り込んだらよかったのではないかと思う。エディと利害が一致するのはドレイクとライオットが一体化することによってだが、この情報も、手際よい開示が可能だったはずだ。宇宙船が中国に落下したのはテンセント出資関係だと思うし、それなければもう少しすんなりドラマが進んだだろう。

 それこそ、故郷でうだつが上がらないヴェノムが、一発逆転の復讐を狙って自発的に宇宙船に忍び込んだことすればよかったのではないか。炎に弱いシンビオートを、大気圏で燃やし尽くし、自分は地球に着陸しようと意図する、など、やり方はあったと思う。宇宙船を壊す役回りだったのがライオット自身だったのが、意図不明だ。「負け犬」を先遣隊としてあえて引き連れ、最後には融合を誘ってくるのもいまいち一貫性がない。

 故郷においての何かしらの離反、敗北などを背景とし、(強引なこじつけではあるけれど)「(我々の種としての)毒」=地球の言葉でいうところの「venom」である、なんて意味合いを持たせれば、ネーミングにも意味が生まれただろう。或いはまさに〝負け犬〟という言葉を用い、ライオットからは「〝負け犬〟ヴェノム」なんて呼ばれているような関係性だったら、ドレイク/ライオットに対する利害関係、協力体制に説得力が見出せたのではないか。

 ヴェノムが何故エディの身体でなければいけないのか、という説明も作中では「気に入った」以外にないが、「負け犬のリベンジ」の軸をもっとはっきりさせれば納得もいっただろう。そのためにエディがもっとアウトローというか、すぐ手が出てしまう、怒りっぽい、みたいな性格になっていて然るべきだったと思うし、どうせダークヒーローで脳みそ食べることも条件付きであれ許容するくらいなのだから、もっと悪い男にしてしまってよかったと思われる(悪いからこそ全てを失う、でもよかっただろう)。変にMCUに目配せをして半端にしてしまった感が否めない。ぶっちゃけあんまり『最悪』ではなかった。

 寄生獣のように、生命を共有してしまう、という唯一無二性を、どうにか持たせることができたらよかったのではないかと思う。自由に寄生対象を選べる設定なのに、あえて特定の人物に固執する理由が曖昧で、乗り手の身体的な優劣が語られるわけでもない。例えばエディはかつてボクシングをしていた(原作だとその手の設定があるが映画では説明なし)とか、なんとなくでもそういう「寄生に好ましい理由」があればよかったのかなと思ったりする。そういうシンビオート側の選択の理由を描けば、例えばドレイクの場合「知力、権力、思想」などに相当するだろうし、より人間/シンビオートのコンビでの個性が明白になったと思う。

 しかし、ドレイクはほとんど寄生獣のキャラクターみたいだった。寄生獣を読み返したくなったよ。

 

 

 このツイートはすごく同意できるし、宇多丸「ムービーウォッチメン」終盤でのアイディアにも賛同するところが大きい。こんな感じの展開が盛り込まれていたらもう少しアツかったと思う。

 総評的には面白かったし、やっぱりあの黒々とした巨駆が暴れ回る様はそれだけで楽しい。スパイダーマン3のリベンジにもなったのかな、ソニースパイダーマン3のヴェノムはプリケツなのが笑っちゃうよね。

 そしてラストで示唆された次なる展開。あのキャラクター、あの俳優にするの感は否めない。若手イケメン俳優とかにしないの? みんなオッサンになっちゃうじゃん。あのシーケンス、羊たちの沈黙のオマージュですかね。